日本ワイン業界専門誌『日本ワイン紀行 vol.024』に弊社代表が寄稿~JOURNAL OF JAPAN WINE

こんにちは。マザーバインズ&グローサリーズ株式会社の丹羽(にわ)です。

2024年9月1日発刊されました、日本ワイン業界専門誌『日本ワイン紀行 vol.024』に弊社代表の陳 裕達が寄稿いたしましたので、その内容をご紹介いたします。

関連リンク:日本ワイン紀行

ワイナリーの立ち上げやブランディングなど、弊社のコンサルティング事業を通じて見えてきた日本ワイン業界の現状とその課題を皆様と共有する本連載。4回目となる最終回の今回は、内外の市場で逆風が吹く中、ワイナリー数増加の一途を辿る日本ワイン産業の市場拡大に関して弊社が描くシナリオと活動をご紹介します。

「日本のワイン紀行 vol.024」の表紙

変わりつつある世界の主要ワイン市場地図

2023年OIV発表の統計によると、世界のワイン消費は2018年以降減少を続けています。その背景には中国の景気悪化による消費減少、コロナ禍の影響に加え、ウクライナ情勢、エネルギー・流通コスト上昇、それに伴うワインの価格上昇があるでしょう。中でもかつて世界消費の53%を占めていたEUのワイン消費は現在48%に減少、特に伝統的なワイン生産国の国内消費減少が顕著で、その市場ロスをどこで補うのか、各国が検討を重ねています。この記事を書いている時点で、急激な円安から円高傾向への移行が見られていますが、このまま円高が進めばEU諸国から日本市場への輸出攻勢が強まり、輸入ワインと日本ワインの競合がさらに高まることは必至でしょう。

世界の市場が求めるスタイルの変化は日本ワインへの追い風に

一方、海外市場での日本ワインにはポテンシャルがあると考えます。弊社では国内のワイン関係者の啓蒙のため、フランスの発酵資材メーカー、Laffort社のセミナーを長野と山梨で定期的に開催しています。2024年7月のセミナーでは、同社オーストラリア支局のエノロジストから、オーストラリアを含めた海外の生産地ではアルコール上昇を避ける対策の1つとしてマストへの加水が許可されていること、ワインのスタイルは樽や長期熟成を経たフルボディータイプではなく、フレッシュでアロマティック、あるいはフルーティなスタイルが好まれるようになってきたことが紹介されました。

会場でセミナーに参加された方に挨拶をする代表の陳

また、フレンチ・レストランでは濃厚なソースからシンプルで素材を活かすレシピへの遷移が見られ、求められるワインのスタイルが軽やかなものにシフトしてきた点も指摘されました。これらの変化は繊細で精妙、上品で優雅なスタイルを特徴とする日本ワインが世界の表舞台に上がる可能性があることを示唆するのではないでしょうか。

セミナー会場にて講義を行うLaffort社のタータス氏

日本ワイン市場を拡大するための地方飲食店との協業

限られた国内市場をどう拡大していくのか。弊社が注力するのは地方市場の育成です。現在日本ワインの消費は都心を中心とした一部の愛飲家に集中しています。例えば弊社醸造所が所在する長野の市内飲食店を調査しても、長野ワインをオンリストしている店はごく稀です。ワイナリー数が全国1位、つまり日本で一番身近にワイナリーがある長野ですらワイナリーと他業種の交流は大変希薄だということです。今後幅広い消費者層を獲得するためには、特に地方市場の育成は重要なカギとなるはずです。飲食店に日本ワインの理解を深めて頂く為、本来ワイナリー設立を目指す方の委託醸造のみを対象にしている弊社の長野醸造所に飲食店様を受入れ、お店の味わいに合うワインのレシピ―を協業して考案、オリジナルPB製造を開始しました。シェフ目線で醸造法を考え日本ワインの新たポテンシャルを引き出す事も本件の狙いの一つです。

左から、和音人様との共同開発したオリジナルワイン「雪桜ロゼスパークリング」、「Mr.pairing シャルドネ」、「Mr.pairing ソーヴィニヨンブラン」が並ぶ

地域で採れた食材を使った料理にはその地域のワインが合う」というのは世界のワイン業界共通の認識です。それを日本の飲食店で日本ワインを生かして実現できれば、新たな客層の獲得、客単価の引き上げも狙えるのではないでしょうか。

長野市にある「ピザ&ワイン酒場シロッコ」にて開催したコラボディナーの様子

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HoReCa/サービス・飲食業界との連携

弊社の子会社で日本ワインの販促を行っているマザーバインズ&グロサリーズ社では、有名シェフとソムリエの方と協業しマリアージュを化学的に解析し、提供する試みを進めています。主観で提供されているマリアージュに化学的根拠を示し、日本ワインを選ぶ理由を明確にする試みです。この試みで“実証されたマリアージュをサービス・飲食業界と連携して全国に広め日本ワイン市場を広げて行く、その先に海外市場進出を見据える”この様なシナリオを描き、身近なところから実践をしています。

おわりに

「日本ワインのポテンシャル、ビジネスの多様性と可能性を地域住民と周辺産業が認知して結び付くことで産地が形成され、日本ワインの固有価値・文化が形成されて行く」。弊社が2000年の創立時に描いたヴィジョンはこの24年で少しずつ具現化され、そのポテンシャルは想像を大きく上回っていると感じています。今後も弊社が掲げる理念「日本ワイン産業の発展を支援して行く」とコンセプト「日本ワインの固有価値形成/文化の創造」を軸に活動をして参ります。4回にわたるご購読、ありがとうございました。

有限会社マザーバインズ代表取締役 陳 裕達氏

総合商社 大倉商事株式会社でビール・ワインなどの製造プラントや製造設備の輸出入、三国間貿易、ODA開発協力プロジェクトに携わったのち、2000年に有限会社マザーバインズを起業。ワイナリーの新規開設や栽培醸造指導、ブランディングに係るコンサルティング事業を広く手掛けている。また、クローン特定された健全苗木の生産事業を山梨に起業するなど、国産ワイン製造における環境インフラの整備にも力を注ぎ続けて現在に至る。